月影
」のレビュー

月影

SHOOWA

BLというより文学的な人間ドラマ

ネタバレ
2023年1月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 月影と続編の逃げ水についてのレビューです。
この作品は捨て子だった主人公の清人が廓のお姉様たちによって命を救われ、辛い経験をしながらも初恋の相手だった妻子ある先生との儚い愛、見受けしてくれた養父の包み込むような愛、医学生の同級生と育んだ束の間の愛、女中だった女性との結婚によって手に入れた家族愛などさまざまな愛の形を知り、最終的には孫にも恵まれて臨終を迎えるまでの物語です。
BLにありがちなご都合主義のハッピーエンドはありません。
特に月影の終盤での先生との一夜限りの逢瀬の場面は切なすぎて胸がえぐられる思いでした。
そんなに遠くない昔のあの時代にこの主人公と同じような人生を送った人たちが本当にいたのではないかと思わせる、リアリティのある作品なだけに切なくて切なくて読後の余韻が凄いです。
絵柄が儚げな清人の物語とマッチしており淡々と話が進むこの短編2話でこれほどまでのインパクトを残す作品を作り上げた作者様は素晴らしいと思いました。
読後はちょっとしんどいけれど少しでも多くの方に読んでもらいたい作品です。
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