勇者パーティーを追放、引退、そして若返った二度目の人生でも、やっぱり貴方の傍にいる
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勇者パーティーを追放、引退、そして若返った二度目の人生でも、やっぱり貴方の傍にいる

薄影メガネ/兼守美行

設定が甘い

ネタバレ
2023年1月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ ネタは面白いのに、それをほぼ生かせていない印象。最も苦痛だったのは文章の80%が雑談と説明である事。起承転結のいわゆる「転」部分はほぼ皆無で、一番盛り上がったのは序盤の断罪シーン。説明シーンが多いのは素人が多いなろう系の悪癖だと思っていますが、今作は顕著にそれが出ていると思いました。ともかく設定が甘い上に説得力が無い。そもそも、ルーカスの事を思ってパーティ追放を決めたのであれば、冒頭の断罪シーンは王子とルーカス2人だけの会話で良かった筈。それを大衆酒場で多勢に無勢状態で断罪する必要は全く皆無では?ただの虐めでしかないし、いくら周りを買収した状態で行ったとしても、関わった人数が増えれば増えるほど情報漏えいなんて当たり前にします。パーティから抜けさせる事が目当てであれば、心酔している王子からの拒絶だけで十分だったと思います。大人数からの断罪という体の方が絵になるから…という理由なのかもしれませんが、いわゆる胸糞設定の割にはその後のざまあ展開がグダグダ。スッキリはしません。それに両思いになる流れも、一体いつから王子がルーカスを想っていたのかがかなりふんわりしていて分かりづらい。中年だったとしても関係なくルーカスを愛するつもりだった的な確固たる意志が全く見えてこない。読者が欲しいのはそこの執着。結局若いが勝ち、みたいな、ご都合展開となり、その辺りで一気に萎えました。王子の父親に関しても、今になって「自分が身請けても良い」と言い出す意味が全く分からず。今になってそれを言うなら過去の時点で受け入れるべきでは????片思いだったのならまだしも、恋人同士だった訳ですよね??どんだけ無能で意気地なしの王様でしょうか。そんな事言うなら過去も手を出すなよと思います。手を出していないなら息子をたきつけるつもりで言ったという体で納得出来ますが、手を出していたなら話は別。どういうつもりでそんな事言ってるんだろう?更に勇者の証が物理的外傷で失効するという設定も、普通に戦闘でも外傷を受けるだろうに、そんなに簡単に失効してしまう勇者の証って何?と思ってしまいました。故に全編通して王子の存在感が軽い。自ずから何も動いておらず、設定のみで実権を握っているだけの状態。魅力は薄いように思います。文章は読みにくい事はありませんが、稚拙です。シリアス設定なのに途中途中ギャグ調になる箇所がかなり気になりました。
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