アドリアン・イングリッシュ
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アドリアン・イングリッシュ

ジョシュ・ラニヨン/冬斗亜紀/草間さかえ

全5巻(+短編1冊)夢中で読んだ

ネタバレ
2023年1月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 海外作家が描くBLってどんなものかちょっと読んどくか、くらいの興味で読み始めたら、これが面白くて夢中で読んでしまいました。毎日寝不足です。

攻めのジェイク!こいつがとにかくややこしい男で、なかなか2人は収まるところに収まれない。怒りで何回も奴を脳内で八つ裂きにしつつ、それでもアドリアンがジェイクに惹かれているのがひしひしと伝わってくるので、結局ジェイクを許すしかない。読んでいるこちらの心も嵐のように荒れ狂う。
アドリアンにはジェイク以外にも知的で懐の深い男やら馴染んだ元カレやら複数からのアプローチがあるのだが、ジェイクの瞳の色やシンプルな服装や引き締まった筋肉を淡々と観察するその視線に、アドリアンの心はジェイクしか求めていないことがあからさまなのだ。そしてなにより、アドリアンに触れるジェイクの優しい手つき!最初の頃の遠慮がちな手、信頼が深まってからの気持ちのこもった手、腰に回される手…。恋人にするにはあまりにも難儀なジェイクの良いところを途中必死で探してみたが、この愛に満ちた手、スキンシップ、つまりSEXしか良いところがないんじゃないかと愕然とした。その唯一の良いところすらも、4巻で見失うわけだが…。

ジェイク・リオーダン、お前という奴は…と4巻まで何回も打ちのめされてきて、5巻ではまさかの「アドリアン、お前って奴は…」。ここに来て最大の障壁が明らかになる。もともと少食なアドリアンが5巻では液体以外はほぼ栄養を摂取してないように見えて、彼の身体が心配になる。
5巻の母親リサの存在がありがたくて、浮世離れした少女のようだったリサが、恐るべき母親力を発揮して、アドリアン以上にアドリアンに必要なものを見抜いている描写に舌を巻いた。

エチシーンは期待以上に良くて、緊張感やためらい等の心理描写、一歩進むことへの喜び、相手の中の欲望や満足感を探る様子などにリアリティがありました。

読み終わってしまうと、もうこれ以上読めないのだという強烈な喪失感に襲われましたが、ありがたい番外編含めて完璧な幕引きだと納得しました。再読すると、初読の時には知る由もなかったセリフの奥にある2人の(特にジェイクの)本心が垣間見えて、また違う楽しみがあります。
すっかり作者のファンになりました。
※複数の地雷要素がありますので、地雷を避けたい方はレビューなどでよく調べてからお読み下さい…。
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