世田谷シンクロニシティ
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世田谷シンクロニシティ

本郷地下

以前に読んだ人も、今もう一回読んでみて!

ネタバレ
2023年1月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 書き下ろし番外特典が配信されたので再読しました。そしたら以前に読んだ時とは全く違う感想を抱いた自分を発見しました。時代が進んだという事が何よりも大きいのですが多種多様の出版物に触れられる恩恵に与れた僥倖が理由です。

今作品の主人公は恋愛的志向と性的志向の対象の性が異なるセクシャリティーです。(クロスオリエンテーションというらしい)まずここを受容れるのが大事。これを否定しながら読むとキツいかもです。
今作品はこのセクシャリティーを描いたというだけでもとても意味があると思います。

1話の初配信が2016年6月。その頃の自分を省みるに性的マイノリティに理解があるつもりでその実全く解ってなかったです。今なら少しはマシになってると思うので、もしかしたら世間様もそうなんじゃないのか?と考えた次第です。すみません…汗汗。

理解されないというのは本当に辛いです。「それ治らないの?」と無知な善意から言われるのが一番辛いです。
無知はある意味では罪だと思います。しかし善意からだとしたら一概に咎められません。そこにやるせ無さと出口の見えない苦しさを感じます。

それと「好きなのにできない」というのは自分の苦しみと相手の苦しさの2人分背負うことになっていっそう辛いのではないか?
そんな主人公が好みドンピシャの気になってた人から誘いを受ければ流されて一線を越えたって…と言うかせめて刹那の身体的快感を与えてあげたい、それくらいはいいんじゃないのか?と思ってしまいました。
お付き合いしてた彼女さんがとても良い人なのでこれまた切ないです。しかし彼女も本人もいつかは治るもの、治したいと考えていた時点で結局は違っていたんだろうなと思います。

性的な志向を理解することだけがその人の全てではないですが、それでも解ってくれる人が周りに一人でもいればすごく息がしやすいと思います。
本編のラストが恋の結実ではなく、理解を得られたこと、なのにすごく感動しました。
両思い決定ではないのに、主人公の恋愛と性的志向が一致したことに安堵してしまいました。
それはこういう形で恋愛の対象になり得るかも知れないよ、と示唆されたからでしょうか?
それ以外の幸せの形を今の私には思い付きません。いっぱい考えましたが今作の落とし所がベストだと思えました。

次に再読したらまた違う感想を抱くかもしれない、そう思わせてくれる作品です。
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