金の絵筆に銀のパレット
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金の絵筆に銀のパレット

ARUKU

生きていることに感謝する

2023年1月10日
私的オールタイムベストのARUKU先生の新刊。読み終わってから奥付を確認したら2022年3月号の雑誌で連載スタート。ということは、侵攻が始まる前に構想されていたはずなのですが、作者さんの作品はファンタジーを扱っていてもいつも現実とリンクしてしまいそうになります。
結核に感染し徴集されず空襲も生き延びた元画学生。終戦後、結核からも快復して退院すると、ある青年実業家がなぜか身寄りのない元画学生の面倒をみてくれて不思議な家に住まわされる。この青年も戦争に従軍していて傷を負っていたのだった。生き残ってしまったと感じるふたりが戦争の辛い傷を抱えながら、生きることに感謝し戦後の新しい時代で美しい世界の色をみつけていくお話。描け、と、縫え、はとても似ていて、まだ連載中の傑作「昨日、君が死んだ。」を思い起こさせました。
ARUKU先生の作品には辛く厳しいお話もありますが、この作品は既に時代は戦後になっていて、ふたりの関係は親しみから甘々へ流れるように進んでいくので、過去は辛くとも作品中の時間は優しいお話です。なので、安心して読んでください。
日常のすぐ隣にありそうな不思議。明るさだけでなく暗い心が囁く清濁併せもった奇妙な事が起こる家がARUKU先生っぽくてほんと好き。
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