半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
」のレビュー

半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

有馬嵐

普通という言葉がいかに残酷か

ネタバレ
2023年1月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 物心つく頃から、母親が家で目の前で身体を売って銭を稼いでる間、ジッと小さく座ってることを強いられ、腹が減っても許可してもらえずゴミ箱に捨てられた冷えきったピザを漁って食べたり。でも、中学に上がった途端、1ヶ月ご飯(コンビニ弁当)用意してくれるようになった母親。冷めていても嬉しかった。でもある日、知らないスーツのおじさんがやってきて、何が何だかんだわからないのに、このおじさんに身体を売ることを勝手に決められていて。…ニコニコしていれば商品として大切に扱ってくれるし、お金も弾んでくれるし。こんな家庭環境が日常である白木心と、6人兄妹の長男の黒川慎。同級生である以外、共通点がない2人。タイトルにある「半分あげる」が、なんなのか。レビュー見ずに行って欲しいんだけど……

白木はスポンジみたいなやつで、脱力感があるわけでもなく、且つ摩れたり不良と言うわけでもなく。まさに“善悪全吸収男“で…諦めているというよりか、一旦は受け止めるけど直ぐに手から溢れていくというか。かといって悲観している訳でもない。本当に“攻撃される以外“は総て受け止めるけど、何もない。だって返ってこないし、手を伸ばしてはいけないと何度も何度も身を持って味わったから。
…意外と、作中にモノローグとか心の声が少ないなと気づきました。その分、短い言葉が刺さるんですよね。だからこそ一緒に白木の話を聞いてる空気を感じるというか。言葉にならないです。

レビューのタイトルは、この作品を見て素直に感じたことです。学校に居る目立つグループに居る彼の家庭環境がこんなだなんて、誰が信じるよ。そして、黒川との対比。本来は絶対に手に入らない“普通の家“で育つ黒川がぶつけてくる、当たり前なんだろう彼を、話を、白木はまるで太陽のように(勝手に)拝んでると純粋に知ったとき「何で?」って普通に思った。自分だったら卑屈になってると思う。
あと多分、白木の根底に「母親が好き」という感情が1mmでもあるんだろうな…いつからああなのかはわからない。けど、ごく稀に優しさとかは感じた瞬間があるんだろうなと勝手に思った。

白木が望んでも絶対に手に入らなかった“返ってきた好意“を実感したシーン。麻痺した白木の痛みを黒川が代わりに泣いてくれたシーン。善すぎて呆然とした。

結ばれた後の、実は白木おまえ…具合、タガが外れてて好きです!!!いや〜〜読んでくれ〜〜〜
いいねしたユーザ23人
レビューをシェアしよう!