ミステリと言う勿れ
」のレビュー

ミステリと言う勿れ

田村由美

フーダニット 〜 二重に絡む謎解き

2023年1月15日
12巻まで読了。
ミステリーを読む醍醐味は思いも拠らなかった手法や思考でズバッと解決、謎を回収してスッキリとした爽快感を得る事だと思います。特に思考の積み重ねとそこから導かれる閃めきに惚れ惚れしてしまいます。探偵役は日々あらゆる事に疑問と興味を持ち見識を広め深める天才ではない人物だと尚更好感度が高いです。(※あくまでも私的見解です。)

今作の久能整はまさにドンピシャ!うざったらしい隠キャなのも好み。彼を取り巻くのは、大隣署の刑事たち(情報の提供元・正当法で事件にアプローチ)、犬堂家の面々(裏ルートで謎の大元を攻める)、入院患者のヒロイン(久能の内面に作用)等々。彼らとの掛け合いで笑いや切なさなど様々な感情をもらえます。その上、やり取りするうちに謎の核心に徐々に近づくという面で、久能を孤独の探偵にしておきません。
………
さてこの久能整が長々と垂れ流す能書き、もとい、疑問と見解が、この作品のカラーを決定付けてしまうほどの分量で描かれています。
個人的に共感できるのもあれば、ちょっと穿ち過ぎじゃね?と思うのもあり退屈しません。
彼の語りから、固定観念をぶっ壊してあらゆる方向から物事を見て考える楽しさを読んでいます。
謎解きはいかに頭が柔らかいかで勝敗が決まるのでは?そして前述したように探偵は常々考えて疑問を持ち続けることが矢鱈多い方がいいと思っています。
作品によっては探偵の考える過程をずーっと黙っていて最後に説明するスタイルもあります。古典とかはその方が多いかもです。
しかしこの久能整はやんぬるかな、口にせずはいられません。もうそういうキャラで立ちまくっています。
これは作者さまが言いたいこと、ではなく、久能整がそういうキャラクターであること、と履き違えずに読むといっそう面白いです。
………
舞台は富山に移りまたまた大波乱の予感。美しい景観と美味しそうな食べ物でも楽しませていただいてます。富山とカレーと言えばイミズスタンと呼ばれるカレー王国も取材してほしかったかな〜。
いいねしたユーザ25人
レビューをシェアしよう!