薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】
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薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】

中村明日美子

甘い薫りに引き寄せられる蟻のように

ネタバレ
2023年1月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 近親BLすごく好きなんですよね。義理でもなんでも兄弟(あるいは父息子等)で致すなんて、繋がりを認識して尚、抱きたい・抱かれたい、愛してる・愛されたいが勝る。兄あるいは弟にハッキリとした欲望を抱くなんて、狂ってるようでいて実は非常に自分のことを理解してんだなって。だって本来働くべき理性が利かないほど欲しいんでしょ、相手が。
狂おしいほどの愛情、愛憎、性愛が感じられて好きなんですよ。まぁ現実を考えると近親が相思相愛なんて60億分の数パーセント以下だと思う。しかしこれは漫画。漫画なんだから恋人たちが幸せになることを見たいじゃないですか。

でも、そうならないのが中村明日美子先生なんですよね。

竹蔵は狂ってるとかそんなじゃなくて、渇望して渇望して渇望し続けてようやく兄が手に入った。動物的な番に近い考え方なんだと思う。だけど兄は、兄は”実の兄弟であること”、”妻にバレたこと”、”あの男のようになる”…それが本当に耐えれなかったんだと思う。
兄の結末は、兄しか解らないだろうと思う。けれど私は、逃げてもう一度、竹蔵に捕まったら共に生きていきたかったんではないかと、そう思った。
義理ではない、兄弟でヤることに罪の意識を覚えても実の息子のを舐めても顔色ひとつ変えなかった兄は本当に竹蔵、妻、会社のことしか考えてないんだな…そこにも狂気を感じました。あるいは、兄と息子は似た者同士だったからなのかな…要のような強かさがあったら、結末は違ってたのかもしれないが。繊細な兄…イイ………

二人が営んだ愛憎が果たして幸せだったのかどうか、その先を知るのは息子の要だけ。彼らの代わりに、あの至福な時間を味わい続ける要がいつも幸せでありますように。
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