俺の人魚姫
」のレビュー

俺の人魚姫

雪居ゆき/ARUKU

主人公(人魚姫)の親衛隊になりたい!

ネタバレ
2023年2月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ ARUKU先生原作です。ファンタジーではなく、シリアスですが重すぎずで、いつもよりARUKU先生ワールドは控えめだと思います。今ならSALE中ですのでぜひ。

主人公の道雄は吃音があり、一人孤独に生きてきましたが、自分の唯一心の支えになっていたのは、子どもの時にいじめから救ってくれた悠馬の存在。遠くから見ているだけでいいと、陰ながらに恋心を抱き続けていた中、二人が急接近します。視力を失った者と名無しの君との恋から、視力を取り戻した常務としがない従業員との恋に変わり、切なくも美しくストーリーが展開されていきます。

道雄は、悠馬の理想のタイプ「純情可憐で儚く折れそうな椿姫」をそのまま当てはめたような人で、人魚姫のように儚く消えていくのではないかと不安になるくらいでした。こんなかわいくて一途ないい人が、理不尽な目に遭うのがかわいそうで、それでも健気に悠馬の幸せだけを思う道雄がいじらしくて…。こんなに主人公の親衛隊になりたいと思ったのは久しいです笑。道雄がそんな魅力溢れる人だからこそ、悠馬は性別を乗り越えて好きになったのだと感慨深い気持ちにもなりました。

個人的には悠馬よりも柏原の方が好みでしたが、悠馬の人間的な思考には納得できる部分もあり、そこがストーリーをより面白くしている理由の一つでもあります。自分に尽くしてくれている人に申し訳なくて結婚を決めたとしても、自分に立ちはだかる障害がなくなった時に白紙に戻したいと思うのも、薄情に見えますが共感できます。自分の恋愛対象は女で、美人な婚約者がいても、求めるのはあの時の名無しくんであり、目の前にいる道雄。それに気づくのに遠回りをしましたが、ずっと自分の想いを閉じ込めていた道雄が、自分の言葉で想いを伝えて幸せになったことに大きな意味があったと思います。まぁ本当は悠馬にもっと好き好き言ってほしかったところですが(^_^;)

ざまあ展開もきちんとあって、ムカムカしていたものがスーっと晴れる爽快感と、捨て身の切ない恋心が報われて温かな光を感じられる幸福感に大満足でした。スピンオフの柏原編も読むのが楽しみです!
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