このレビューはネタバレを含みます▼
スランプで新作が書けない偏屈小説家•門倉清文は、台風明けの海辺で全裸の青年が倒れているのを見つけます。水死体かと思いきや、青年は門倉を見て「神様ありがとう」と呟くのでした。門倉は青年を友人の医師•奥村美園の診療所に連れて行きます。記憶喪失らしい青年はしばらくここにいたいと言い、門倉は青年を愛人として家に置くことにし、漣と呼ぶことにします。それは門倉のデビュー作の主人公の名前で、他のことは思い出せないけれど門倉の作品だけは思い出せると言う漣はとても喜ぶのでした。人懐っこい仔犬のような、得体の知れないエイリアンのような漣に門倉は心乱されます。エロ頁が多いのですが、漣の身元を含めたミステリー仕立てになっていて、ストーリーの力強さにグイグイと引っ張られます。各章の扉絵がそれぞれ鎌倉の風景になっていて、美しさとともに物語の奥行きを深めています。