囀る鳥は羽ばたかない
」のレビュー

囀る鳥は羽ばたかない

ヨネダコウ

夜明け前が1番暗いと信じたい

ネタバレ
2023年3月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ こちらの作品は、いろいろな意味で魂を揺さぶられる作品で、読後は感情を一気に持っていかれるので(まさに沼)、なかなか感想が書けずにいました。ストーリー、伏線の回収、登場人物の台詞一つ一つを思い返しながら何度も読み返してしまう漫画は今までありませんでした。その吸引力の源は主人公の矢代の魅力にあると思っていますが、飄々として気のむくまま刹那的な生き方をしているかのように見えるその裏側では、果てしのない絶望感が見え隠れします。自分は汚れてしまって誰かに愛される資格がない人間だけれど、それでも平気なんだ(本当は愛情が欲しいのに与えられなくても平気なんだ、むしろ傷つけられることが自分は好きなんだ)と思い込むことで、いままで何とか自我を保ってきた儚さを感じます。その深い深い闇に百目鬼が大きな風穴を開けて欲しいところですが、8巻がすれ違いの応酬のピークで終わってしまいました(涙) 7巻から百目鬼のモノローグ描写がなくなってしまったことで、いったいどのような心情で矢代にあのような態度をとるのか、ひとつ分かりかね(キャラ変わりすぎでは?)ヤキモキします。矢代の知らなければ失くすこともなかった、というセリフが切なくて胸に突き刺さります。夜明け前が1番暗いと信じて、9巻目以降は厚いトラウマの壁を百目鬼が壊しまくり(5巻で百目鬼に優しく抱かれることで、今まで自分が好きだと思っていた暴力的な行為に何も感じなくなるという大きな変化が訪れていることを矢代が自覚したので、あと一歩かと)、矢代自身が長い暗闇のトンネルから抜け出す展開を切に希望しています。
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