このレビューはネタバレを含みます▼
なのはいいけど、またエライものに手を出してしまった…
何かで高評価だったので、前々から気になっていたんだけど、脳が警鐘を鳴らしていたので、なかなか手を出さずにいたのに。警鐘通りだった。重い。痛い。
読み終わったあと、少し放心。だけど、本当上手いフェードアウトの仕方だ。悪者探しをすれば、一番悪いのはモブ中野だけど、やっぱり掻き回したのは須藤のエゴで。新谷の性癖というか性質を読み間違ったところから、とんでもないことになったけど。どうにも人生を好転できなかった菊池が、新谷だけは手放さなかったことで、変わっていった。ひどいことをされているのに、須藤を恨み責められない新谷。菊池への愛しさとは別の放っておけない須藤が、自分から身を引いたことで、収まる。一度付いた心の傷は無くなることはないけれど、日薬が効いてくる。新谷は須藤に再会し確かめられてよかった。不安を抱えながら須藤に会わせた菊池の成長は、新谷が導いたもの。
絡み合う三者が「自立」しようと整えた成果だ。クズからも立ち直れる。誰かに必要とされたかった須藤、誰かを信頼し役に立ちたかった菊池。その相手は同じ人だったが、分かれ目でもあったような。須藤も菊池も送ってきた人生は壮絶だ。子どもの頃に守るべき大人に守られなかった痛手は、歪んだ形で現れるけれど、2人とも新谷に会えたことが僥倖。まぁ、新谷も歪んではいるけれど、優しいことには変わりない。番外編で須藤が必要とされることを理解してくれる人に出会えていたことで、皆救われた感じ。新谷に向けるものとは異なるけれど、抱きしめてくれる人だ。新谷一人が全てを救える訳ではないので、目の前にいる人たちを守れたらいいのではないだろうか。
生きることは辛いことが多い。重たく痛々しく、だけど「生きる」ことを手放さないことの意味を教えてくれる作品に思えた。