このレビューはネタバレを含みます▼
木原音瀬先生の新刊!と喜び勇んでシーモアさんで検索するも、ヒットせず…。他の電子書籍会社様に一歩遅れをとった状態でやっと入手。その後、読み始めようと試みるも、何分カタカナ表記の名前嫌いにより、なかなか手がつかず…今。開くと、それは終わりの始まり。手が止まることは無く、作品の世界にのめり込みました。とにかく流石としか言いようがありません。綿密にプロットが組み立てられており、ジャックとガレのストーリーはまるでリアルのようなファンタジーでした。木原先生の代表作、箱の中、檻の外でも感じたことなのですが、主人公が再会するまで、または再会後2人が愛し合うまで、そして愛し合うようになる過程の整合性が1ミリの狂いなく取れている。本作でジャックは軍に所属したまま、任務遂行の為ガレと偽装結婚したのだ、という事実が分かった時の絶望感。「離婚」か「二度と会えないまま婚姻を継続するか」と迫られた時のガレの心境を想像すると、それだけで吐きそうなほどのストレスを禁じ得ない。そして、そこでガレが出した一つの答えで小さな悲鳴が出ました。婚姻状態を続ける。ジャックが他の人を愛したら、不倫とみなされ、僕は恨むことが出来る。死んだ時には僕のところへ帰ってくる。最後は僕のところだ。これはジャックの為だけに用意された究極の愛。魂が震えました。木原先生の書くキャラクターには味があり、それぞれが息をし始めそうなほどに人間臭い。ボーダーラインは異国の戦争(架空)という現実世界から切り離されたテーマではありましたが、驚く程身近に感じられました。あ、ふた◯◯のご都合設定もしっかりと木原先生流に活かされている。が、そう言えば程度に付け加えでレビューする程、ガレの感情にフォーカスしてしまった。