薔薇王の葬列
」のレビュー

薔薇王の葬列

菅野文

シェイクスピアのお話からのものです。

ネタバレ
2023年4月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 報われたら、安らげたらと思い続けずに居られなかった。
ヘンリー六世との穏やかな時間が続き、呪縛から救われればと思っていたが、ランカスターとヨークでは奪い合うものが多すぎる。
兄王からの命でヘンリーを殺すように言われたリチャードはドレスで再会。
ヘンリーに愛して欲しいと乞う姿は悲しかった。
ヘンリーのトラウマでそれは出来ず、禁句のような言葉である「悪魔」と言い放つ姿が心をえぐった。
リチャードは愛するヘンリーに刃を向けた。
バッキンガムのリチャードへの深い介入で安らぎを求めれはしたが、故に妻であるアンを自身の体のこともあり、「愛すことが出来なかった」のかも。
ジェーンの堕胎薬はフラグでしかなかった。
妊娠の兆しをみせた体に困惑するのは当然。
リチャードは「男でもなく女でもない」し「男でもあり女でもある」から。
それが臆病、不安、そして悪魔と呼ばれる理由となり、隠した理由。
折角黄金の環の中に入れたのに、その環である王冠は立場もあり、苦しみを増加させた。
謀反を起こしたバッキンガムは、王座を捨てて二人で過ごしていきたいと伝えるが私情で動けない地位と家族がいる。
国民と妻と実子では無い深く愛する息子。
バッキンガムを処刑するしかなくなり、泣きながらメッセージを伝えて手を下した。
彼の名はヘンリー。
リチャードは堕胎薬を使うことに。
安定しない国で「王」が「女王」でもないのに産めないよね。
妻であるアンが病に倒れ、愛息も同じ病に。
戦争前に同じ病にかかったリチャードを幼い時からそばに居たケイツビーは、王という立場を貫くリチャードを必死で支え、変わらず誠実で忠誠な姿は胸を締め付けた。
記憶をなくし、生きていたヘンリー六世は王の影武者となり、落馬したリチャードの変わりに戦死。
ヘンリーは彼を「僕の王」と。
断片的に思い出す記憶と言った愛の言葉が辛い。
満身創痍のリチャードを戦場から連れ出したケイツビーは生きて欲しいと。
リチャードは父に愛されていたが、母の愛を得られず、愛が欲しかったのよね。
辛くて×∞、読み進めなければいいのにリチャードの高潔さや戦場での鬼神のような姿に惹かれて読破。
心を抉られた。
王は座っていれば良いだけの存在ではなく、色んな課題が山積で、欲しくて仕方が無かったあの座もリチャードを縛り付けた。
おすすめはもの凄くします!
が、心して読んで欲しいです。
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