心を殺す方法
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心を殺す方法

カシオ

何を求めるのが正解なのか

ネタバレ
2023年5月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 春樹が光との行為中に吐いたりとか出来ればよかったのに。
春樹が光と兄弟にならなかったらよかったのに。
義父は結局、光の親にはなれなかった。
英は結局、光のことを見ずに自分自身の想いしか考えてなかったんだ。自分に好意を抱いてる可愛い後輩なんて抱きたいよね。好意を向けられるのに慣れて利用してきた側だから、そうよね。
読み終わってから素直に浮かんだ感想。
邪道ですが、4巻から見始めて1巻から見直したという、答えを知り中身を量る作業大好きマンのやり方で見ました。

タイトル「心を殺す方法」。これ、光側の思いは解る。けど、春樹の「どうして嫌がって壊れたのに光を選んだのか」は、「明確な表情、言葉が出てない」からわからないのかもしれない。
わかるのは「春樹が何をしても光の想いが変わらなかったから"安心した"」「(優しくされると英にまた)依存してしまう」。この2つの言葉。

人間が抱える本気のエネルギーって凄まじいですよね。愛が憎しみに変わって愛する人を殺めてしまったり、好きが高じて借金したり。排泄されるエネルギーが無意識から有意義に変わった瞬間、人って簡単に変わる。周りが見えない、世界が輝いて見える。そこでふと後ろをみると「自分にしか価値がわからない」道がある。理解できる人は居るだろうけど口にしないと誰も気づけない。だからこそ出会いも別れも「伝える」が切っ掛けなんでしょうが。

ああ、義父。貴方は最後まで他人のままでしたね。仮に無事に子どもが生まれてもきっと貴方は光に「兄なんだから家族が増えて嬉しくないのか、母さんも大変なんだ、手伝いなさい」と言うよね。光のことも春樹のことも「表側」しか見ないから。学生に身重の妻を「迷惑を掛けたんだから、大切に扱って監視しろ」だなんて。春樹が何故「依存してしまう」と漏らしたのか。この結末が少からず貴方にも原因があるのでは?

気づいたら義父に対する何かが溢れてきてビックリした…でも、春樹が選んだ道は確実に幼少期のトラウマ入ってるよね。何故義父が独身だったのかわからないけど。義父なりに必死に育てたんだと思う。でも春樹がどうしても心が消せなかった理由は少からずあるんだと思う。強烈だよね。ここまで来ても光は春樹が好きなんだから。たまらないよね、不変が。

いつか義父にバレて全部捨てても春樹も光も幸せなんだと思う。そう思えるラストでした。ごちそうさまでした。
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