このレビューはネタバレを含みます▼
日本画や仏画を思わせるような繊細で美しいカラーイラストに見惚れてしまいました。本編を読み進めるなかで、画面を通して伝わってくるものは王子の孤独や苦悩・悲しみ。実の母親に自分の持つ不思議な力を怖れられ、与えられるべき愛情を与えられず心に傷を抱えて育ってきた王子が、毛人との恋に敗れたことでさらに深く傷ついてしまった姿があまりにも痛々しくて…毛人が憎い。毛人は悪くないんですけれども毛人が悪いような気がしてくる不思議。王子は愛を得られなかった代わりに(?)強大な権力を手にしますが、自分の子供たちは生を全うしないことを知っていた…諸行無常ということでしょうか?「無駄なこととわかっていて、それでもわたしは生きてゆく」という王子の言葉が深い。自分の思う結末ではありませんでしたが、心を揺さぶられるお話でした。“王子と毛人が訣別することとなった「夜刀の池」での毛人の言葉が、男性(同性)同士が結ばれることを神はお許しにならない、と読み取れてしまうことが少し残念でした。違っていましたら申し訳ありません。”