【愛蔵版】新世紀エヴァンゲリオン
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【愛蔵版】新世紀エヴァンゲリオン

貞本義行/カラー

アニメよりシンジくんが元気

2023年6月9日
通常版(全14巻)所持。
エヴァリアタイ視聴世代です。
テレビ版のエヴァンゲリオン、あれは本当に衝撃的でした。重量感あるアクション、聖書になぞらえて散りばめられる謎、迫力とメリハリのある演出、組織と個人の絡み合う思惑、そして覇気のない主人公。毎週夢中になって観て、ラストに愕然としましたね……。旧劇場版も、映画館に観に行って放心しました。
さて、当時は自分もシンジくんとほぼ同い年だったので気付きませんでしたが、歳を重ねて思う事は「作中にまっとうな大人が存在してない」です。シンジくんかわいそう。
で、シンジ及びゲンドウは、庵野氏の分身の色濃いキャラだと思っているのですが。テレビ版では、子供の自分と大人になりたい自分の葛藤や他者の存在との折り合いをつけるための苦悩などが強く、シンジが他者と共に在りたいとか成長したいという気持ちが見えます。旧劇場版では、もう心の内の苦しさをバンバン叫びまくって、それでも他者が存在することを選んだという……私小説っぽさがあり、庵野氏のエヴァはここで完結していると思っています。
この貞本氏による漫画版は、シンジくんの性格がアニメに比べて前向きさと覇気があり、それが故に、主人公が成長する少年マンガとして成立していると思います。テレビ版と旧劇版を合わせてできうる限り謎伏線を回収しかつ異なる終着点のこの作品は、エンタメとしての完成度は最も高いのではないかと思います。
それでもやはり、エヴァンゲリオンは庵野氏のものであり、貞本氏によるエンドマークは「別モノ」。けどエヴァに興味のある方にはおすすめしたいという複雑な好きさのある作品です。
中盤までのテレビ版のダイジェストとしても見ることができ、新劇場版では見られない数々の名シーンが嬉しいです。特に、ヤシマ作戦での正八面体使徒とのポジトロンライフルすれ違いシーンがやたらと好きな私にとってポイント高い。
愛蔵版とは違う部分もあるかもしれませんが、備忘としてのレビュー。
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