元々無い者の強さと無くした者の強さを知る





2023年6月12日
シリーズ第三弾。何とも言えない奥深さのある作品だと思います。根底にあるテーマは、難聴・ろう・家族・友情・恋愛・仕事…など幾つかあって、どれも適度に広く深く関連しあって読み手を引き込みます。赤ちゃんを抱いているような心地よい重みと、ガーゼケットのような優しい厚みみたいなものを感じました。第一弾では、聴覚障害とBLを軽く絡ませたような(ある意味浅いとも思える)話だった気がしますが、シリーズを重ねる度に良くなっている気がします。聴覚障害と一言でいっても、段階もあれば先天・後天の違い、使う機器(補聴器・人工内耳)の違い、聞こえ方も人それぞれだと知らなかったし、立場によって心情・心理状態もそれぞれなんだと勉強になりました。今回「聴こえるってそんなに偉いこと?」というセリフがグサッと刺さりました。「生まれた時から音のない世界に生きる人の強み」と「音の世界を知っていて無くしたり弱くなった人の強み」には、同じ聴こえないにも雲泥の差があるのですね。作品を通して、相手の立場になって考え行動することの大切さを擬似体験したような気がします。

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ジユンチ さん
(女性/50代) 総レビュー数:845件