こたえてマイ・ドリフター
」のレビュー

こたえてマイ・ドリフター

大島かもめ

読後ずっしりきます

ネタバレ
2023年6月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙の上品であたたかい雰囲気のイメージで読むと衝撃を受けるかも。
最初は大人の小粋な恋のやりとりから始まるのですが、どんどんその穏やかさが刹那的なものだとわかっていき、胸が締め付けられていきます。
過去と現在を行き来しながら流れるように展開していくストーリーで、途中直視できないような悲惨な出来事もありながら、お互いを求め合う心の絆までしっかり描き出していて、これをよく一冊にまとめたなと思いました。

行き着く先は幸せな結末とは言えないです。でもこの先ずっと二人は離れないだろうことはわかる。
読後ずっしりときて、もう少し環境が時代がどうにかならなかったのかと遣る瀬ない気持ちにはなるけれど、不思議と暗い気分にはなりませんでした。安息の日々は訪れないかもしれないけど、二人は子どもの頃からの夢を叶えたんだと思うから。
この二人は一緒にいることが何よりも幸福なんだろうということがヒシヒシと伝わってきて、それだけで優しい結末だと思えました。
最後はすごく後引く幕引き。あと少し彼等のその後が見たかったと思うけど、少しでも心安らかな日々をと願って終わるのがいいのかな。しばらく世界に浸ったまま、彼等の未来に思いを馳せてしまった。
いいねしたユーザ18人
レビューをシェアしよう!