22XX
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清水玲子

同録『夢のつづき』が乙女SFで大好き

ネタバレ
2023年7月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表題作は約170ページ、少女マンガでカニバリズムと言ったらまずこの1作、と思う、印象深い作品。冒頭に『死の病原体プリオン』という本の一節が引用されていることもあり、当時猛威をふるった狂牛病(牛の餌に牛の肉骨粉を混ぜていたということを知って人間の業に戦慄した)から着想した「同種を食べることについて」、更には食べるということそのものについての哲学を含んだ話だと理解しています。
ルビィの覚悟、ロボットであるジャックの苦しみ、何もかもが届かない切なさ、とても良かったです。良かっただけに、この話がジャック&エレナシリーズの1作として描かれているのが個人的につらいです。ルビィが「過去の一部」になってしまうのが、やるせないんですよね……。というわけで星4つ。
・『世紀末に愛されて』短篇。当時の近未来である世紀末ラブストーリー。真実の相手を探す話ですが、いろいろと付いて行けなかったです。
・『夢のつづき』約80ページ。花とゆめコミックスでは表題を飾った、ロマンチックな少女マンガSF。テーマパークのような星に使用人とたった二人で暮らす少女アイリと、そのワガママで無理矢理に連れて来られたロックスターのマーティ。「お金があることが取り柄」と屈託なく言うアイリの、わがままも寂しがりも純粋さも、その少女らしさがとても好きです。この作者さんのこういうタイプの女の子、ちょっと憧れがあって好きなんですよね。マーティと婚約者ローザの純愛も、アイリと高見の主従関係も、とても夢がある。SFとロマンスのバランスが良い、乙女のサイエンススペースファンタジー。星5つ。
・『8月の長い夜』約100ページ。人体実験の地下施設をめぐるサスペンスにボーイミーツガールを合わせて。もうひとつ掴みどころがない感じ。
・『ロボット考〈擬態〉』デフォルメのジャック&エレナの4ページショート。
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