ひだまりが聴こえる-春夏秋冬-
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ひだまりが聴こえる-春夏秋冬-

文乃ゆき

完結させる落とし所を見誤ったのでは…?

ネタバレ
2023年7月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ ひだまりシリーズ全般を通じての印象です。出だしはとても面白かった。しかし、ご指摘の方も多いように、まず主人公2人の関係の進展のじらし方、先延ばしが、許容限度を少し越えているように思われます。さっさと事に及べということではありません。BLとは言えど、全ての作品がそういう行為の描写のみを目的としているわけではなく、全くなかったり、あるいは雰囲気で匂わせるだけでも十分満足できる作品は多々あります。しかしこの作品は、直前までの描写はじっくりなされながら、最後の最後で太一が拒絶したり、もしくは航平が太一の気持ちを慮って途中で止めたり、何らかの事情で中断したりと、毎度2人が結ばれるには至りません。1度や2度なら物語を盛り上げるエピソードとして有効ですが、何年・何巻を経てもこの繰り返しだと、狼少年ではありませんが、そういう雰囲気になっても「またあれか」と期待もしなくなります。そして次に、太一の人物造形があまりに幼すぎる。航平が粛々と自分の道を模索し大人へと成長していくのに対し、太一はいつまでも食い気旺盛で行き当たりばったりの単純さばかりが強調され、航平のアプローチに毎回大袈裟に恥ずかしがるのも次第に鼻についてきます。大学を出て社会に出て周りが大人ばかりになると、尚更その幼さが悪目立ちします。大学時代の描写では、耳が不自由な人の生活について作者様がよく勉強なさったことがきめ細かく反映され、太一の幼さもまだ学生ゆえの可愛さと思えて、とても楽しく興味深く読めました。しかし社会人編になってからは、進展しない2人の恋と、耳の不自由な人の社会参加の問題と、どちらに軸足を置きたいのかがよくわからなくなってきました。結果、本作品は2人が一番良いタイミングで結ばれて完結する落とし所を見誤ったようにしか見えないので、申し訳ありませんが星3つで。上から目線で評価を下げてごめんなさい。
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