ホームドラマしか知らない
」のレビュー

ホームドラマしか知らない

都戸利津

丁寧な心理描写

ネタバレ
2023年7月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 義兄弟が、揺るぎなく大切な「家族」になっていくお話。「子どもらしくできない子ども」と可愛げのなさを自覚する小学生の怜央くんが最初、自分の存在意義を必死に考えているのが切ない。それは誰にも迷惑をかけず自立することだったのが、母の再婚相手の子、透介と暮らすうちに、相手を喜ばせることや、優しさを返すことになっていく。
可愛いもの大好きでたくさんの人に囲まれて苦労知らずに見えたお兄ちゃんも実は再婚相手の実子ではなく、二人とも、誕生日パーティーとかいわゆる普通の家庭のイベントの経験がない。
でも幸せはちゃんと、二人の日常の中にある。
子どもが愛情を知りハッピーエンド、ではなく、成長に伴う「家族の形の変化」とそれを受け入れる過程も丁寧な心理描写と共に描かれていて、そのつど涙が出ます。
怜央くんが花やキラキラを背負って兄を語る、素直なブラコン中・高生(笑)に育っていったのに対して、「大人らしくできない大人」だった透介は社会でも家でも生き辛くなっていく。その逆転からのラスト。
タイトルは単なる「家庭のぬくもりを知らない」意味じゃなかったんだな、と心がじんわり温まります。
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