寄宿舎の黒猫は夜をしらない
」のレビュー

寄宿舎の黒猫は夜をしらない

鯛野ニッケ

ひたすら切なく美しい

2023年7月21日
ニッケ先生の、ファンタジー力(?)の凄さは何なんでしょう。
明らかにファンタジーであるのに、全く「荒唐無稽」とは感じられない。
あっという間に登場人物達に感情移入し、物語の中に一気に引きずり込まれる為、自分が同じ世界線にいる感覚に陥る。
だからこそ、手に汗握ったり、一緒に切なくなったり、彼らの未来に希望を祈ったり、感情が揺さぶられる。

今回のお話も、本当にそれはそれは美しく切ない物語でした。
けれどもニッケ先生の「切なさ」は、いつも希望が持てる。
キャラクター達に芯があり、強さを感じられるので、どんな状況に陥っても「大丈夫!きっと明るい未来が待っている!」と信じながら読むことが出来る。
だから、心臓がギュウッとなる場面があっても、読んでいてしんどくはならない。
そしてもちろん、ちゃんとハッピーエンドになってくれる。
これこそ真のエンターテインメントだと思う。
(あくまで私好み、の話ですが)

作中、登場人物達の苦しみ、怒り、絶望、優しさ、愛しさ、それらが全力で紙面から溢れ出ていて、その表現力の凄さに ただただ天晴れです。
そして本当に美しい。
そもそも絵が美しいというのももちろんですが、彼らが「綺麗だ…!」と感じる情景が、本当に美しいのです。
「ほんとだね…キレイだね…!(泣)」とつぶやいてしまいます。
表情、アングル、字面、コマ割り、全てが計算しつくされているんだろうなぁ。
もしくは先生の天賦の才か。

上巻を読み、下巻は明日のハッピーランチアワーに購入しようと思っていたのに
7秒しか我慢出来ず ポチり。
だって、途中じゃ あっちの世界に入ったまんま、帰って来れません!
最後まで見届けないと、何も手に付かないよ!
一気に読んで、もう今日は幸せ絶頂、夢心地です。
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