ブラーリーエッジ 【電子限定特典付き】
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ブラーリーエッジ 【電子限定特典付き】

雪国ウム

一つの記憶から

ネタバレ
2023年8月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 鮮明に記憶に残る白く後ろに束ねられた両手。記憶にある手に魅せられた中津は、大学生になった今でも無自覚にその手を追っていた。ある日、アルバイトに行くと宅配業者が渋滞に捕まった連絡を受けたが、いつも不機嫌で乱暴な店長はようやく到着した業者2人に怒りをぶつけ、業務外の事を指示し始める。
男らしく立派な体躯をした多賀谷と、か弱そうな身体で丁寧に荷物を運んでいる白瀬は、店長の言う通りにしようとするが、彼が渡そうとしてきたカッターナイフを見て荷物を落としてしまう。怒り心頭になる店長を目の前に多賀谷が謝罪と買取を申し入れ事なきを得たが、中津は申し訳無さを感じ業務後に白瀬らに謝罪を言いに行く。
その時、改めて謝罪を入れる白瀬の美貌に中津は心のトキメキを覚えたのだった…

と、導入はこんな感じなんですが…中津の手の記憶、白瀬の同僚である多賀谷、そして幸薄そうな見目にカッターナイフに恐怖を覚えている白瀬。この3人が複雑に絡んで行くのですが…
ボタンの掛け間違えで、こうにも人は転落していくのか。でも、白瀬がこんなにも病んでいるのにどこか墜ちきらないのはやっぱり多賀谷の存在があったからじゃないかな…白瀬は加害者であると同時に被害者で、多賀谷はあの事件後に目を覚ましていて、未成年という立場上、何もできなくて。だからこそ成人した後に白瀬を自分の力だけで助けたり寄り添ったりできたのは、本当に嬉しかったんだと思う。例えあの事件が2人だけの淡い恋心に強烈な傷を残してしまっても、形を変えても相手のために動けるのは余程の決意がないと出来ないよね…
多賀谷も幸せになってくれ…

中津はさ。これはもうフェチからの執念みたいなもので、幼い記憶が蘇っていってからは特に執着が凄くなったんじゃないかな…手で興奮というかシチュエーションも興奮したんだよね幼い頃、無意識に。
だからもう白瀬への心と身体へのアンテナが全振りでさ…多賀谷に嫉妬するも白瀬からの話、多賀谷からの話。2人の話を聞いて見えてきたあの事件を通じて、3人で仲良く一歩を踏み出せたんだよね。3人共にあの事件で交わり離れ、そしてまたあの事件で交わり、離れる。
先の悲しい別れじゃなく、許しを経ての別れの流れ。
悲しい話でもあるけれど、最期は皆幸せな話です。なのに、謎解きをしていったようで面白くも感じた不思議な1冊です。(致すシーンも多いよ!)
ご馳走様でした。
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