無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
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無職転生 ~異世界行ったら本気だす~

フジカワユカ/理不尽な孫の手/シロタカ

原作とアニメが神がかりすぎて…

ネタバレ
2023年8月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 正直言って、原作とアニメの素晴らしく神的な出来に比べたら惜しいところだらけの漫画化です。しかし純粋に他の異世界転生モノ作品と比べればとても面白いと思います。

前世では34歳チョイ太めのヒキニートが、異世界で赤ん坊として生まれ変わるお話です。
重要なのは、前世のキモさをまるっと持っているところです。エロゲーのお世話になっていて実物の女体に触れたことのないキモオタです。
なので残念なことに、一部の読者にとっては生理的に受け入れられない主人公だと思います。しかもこのマンガには原作の上澄みしか描かれていないので、主人公の苦悩や、心情的に底辺から脱する過程や、「本気だす」の意味の重さを感じ取るのは難しいのかも知れません。
1巻を読んだだけで感覚的にムリ!となった読者の皆さまにはご愁傷様と申し上げます。こんなに面白いコンテンツをみすみす逃すのですから!!しかし今後も頻度は少なくなりますがキモオタの気持ち悪さは表現されていきますので懸命なご判断かも知れません。

そしてこれは面白い!と思った同志の方々よ。
我々は何という幸運に浴していることか!!
見た目の良い男の子の中身がキモオタだという悲哀ともラッキーとも取れる設定が面白すぎます。中身とのギャップをルーディウス本人以上に楽しめる特権です。
そんな彼が様々な出会いの中で強く在ろうとしながら時に打ちひしがれ時にピンチになりながら成長する意思を止めない勇気に感動します。
前世では成し得なかったことを努力の延長線上で、若しくはその過程で実現するルーディウスに涙します。
そして緻密に張られた伏線に気づいた時。回収された時の「物語を読むって、素晴らしい…」と素直に思える幸福感。私たちが知的生命体であって良かったと実感できる瞬間です。
………
漫画では心情的にも設定的にも肝心なことが省略されているので、1巻では父親のパウロがクズいだけの人みたいになっていて可哀想でした。(ルーディウスはパウロとゼニスを親だと感じていないこと、この世界の夫婦のあり方が我々の世界と違うこと等々。)リーリャ目線も表現されていません。そのことを踏まえても、このコミカライズは子ども向けなのかもです。
しかしマンガをキッカケにもっとディープな「無職転生」に触れたいと感じる方も多くいらっしゃるでしょう。
そういう意味では重要な役割を果たしているコミカライズだと思います。
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