同志少女よ、敵を撃て
」のレビュー

同志少女よ、敵を撃て

逢坂 冬馬

圧倒的な筆致力で一気に読ませる

2023年9月5日
史実をベースにした戦記小説ですが、怒涛のボリュームを一気に読ませる描写力、表現力のレベルが新人作家とはにわかに信じられないほどです。戦地で死がすぐそこまで迫る臨場感を文字だけをもってここまでリアルに想像させる作品はなかなかないのではないでしょうか。戦争という大義名分をもってすれば、自分が今まで正しいと思っていた信条や善悪の価値観はあっけなく崩されてしまう。敵として戦っている相手は、絶対的な悪ではなく、戦争という環境にさえ身を置いてなければ、平安な生活を愛し、他者を愛する自分と変わらない人間かもしれない。どの時代、どの場所に生まれるかで、大きく人生は決まってしまう(だから自分が今、好きな本を好きな時間に楽しむことができる環境に生きられることに感謝しよう)、そんなことを改めて気づかせてくれる作品でした。
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