聖なる黒夜【上下 合本版】
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聖なる黒夜【上下 合本版】

柴田よしき

ファムファタールならぬ

ネタバレ
2023年10月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ オムファタールですな。まず、犯人はおそらくこの人だろうなと思っていたらズバリそうでした。じわじわ真相に迫っていく展開は好きなんですが、麻生は自身の怠慢と狡さと無関心で無実の男の人生を狂わせてしまったという自覚はありながらも頑なにその失態を認めないという頑固さ。それは刑事の矜持だろうけれど、警察には合わないとか剣道続けたかっただけとか…なんやそれと。さっさとやめちまえよとなりました。
某刑事の「悪党の命は善人の命よりずっと軽いよ…」
まさにこのセリフが代弁してくれている通りだと思われます。
練の姉には多少好感もてましたが、再審請求とか後悔の念に駆られるのは理解できます。ただ、そもそも出所した時になんで迎えに行かなかった…母親も完全に見放してるしこの失望感はもうどうしようもないよ。
最後まで圭吾の件が有耶無耶でモヤモヤが残ります。これも韮崎の描いた絵なんですかねぇ…だとしたら練が不憫すぎますが。愛憎渦巻きすぎ、愛といえば何でも許されるのか?歪な愛情だらけな人たち。絶望とあきらめによって無理やり歪まされてしまった練が痛いです。いや歪んだと言うよりも壊されてしまったというべきなのか…
でもその結末なんだ。「歩道」を読むともうやりきれなくて、しばし放心状態になりました。それでも尚、麻生を求めてしまう練のピュアなひたむきさに胸を打たれます。やるせない。練はこの先満たされることはあるのだろうか…?
この作品、登場人物の魅力等わかりかねます。まさに自萎他萌でありました。
辛辣な感想ですが、あくまでも個人の主観ですので…まさしくえげつない不条理系でした
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