好きな人が別の人を好きな時の片想いの苦悩





「女のくせに」とは30年位前まで平然と世に言い放たれていた言葉だから、この漫画が制作されていた頃(81~83年)はまだ巷に根強い意識だった。
だからこそ、この話の万里子とお卯野の二人の生きた世の中の彼女達の奮闘が読み手の心を鼓舞するものは、今以上に相当大きかったはずだ。
時代を映すエピソードの多さで、当時の雰囲気とか世相とかクッキリ、そこに危機と隣り合わせで腕まくりの二人は、ハラハラもするが格好いい。
無事でいるはずがないような冒険もあるが、そこは問わない。その状況でも挫けず倒れかかっても起き上がる姿が美しい。
友情で歯を食いしばる数々の場面も美しい。
渡米した日本人が直面する胸痛い諸問題、以前観た日系人の当時の環境を描いた映画などで知識としてはあっても、生命にかかわるレベルでも省みられなかった事実を反映する本作のエピソードの取り上げ方はドラマチック、トビーへも感情移入し、横濱や港とは離れている箇所ではあるが、私の心にはくるものがあった。
竜助の、ストーリーを揺さぶる役割十分。
一方、小刻みに使われた周辺の人間のドラマが片付けられての、主人公二人のターンがメインとなる終盤、複数の人間関係の織りなす重層構造の魅力は減り、変わって目立ち始める対立の描写が、作品の前半にはあった彼女達の、障害に対する明るめの乗り越え方を殺してしまった感じがした。
しかし、海を越えたり、貿易に携わったり、海上輸送に関わるエピソードが度々あったりと、作品に一貫性を持たせて、読み終わると「ヨコハマ」が見事に串刺しを果たしていて、欲張りに話が膨らんでいそうなのに終わってみれば纏まりがある。
大和和紀先生の丁寧で洗練された絵で、明治前半の女性にしてはかなり行動的で先駆的なキャラ、居たかもしれないと思わせる筆致で魅了された。要所要所男性の決めどころも美しく麗しく、最後まで興味を失わされず楽しめた。
今も世界には女子には教育が行き届かない地域があり、私は改善に協力しているが、必要なのは、こうしたドラマへの共感を覚える様な漫画の読み手が、少しでも増えることなのかもしれない。
その意味では、いつも外向的人間を生き生き描ける大和先生作品はエネルギーがあって示唆もあって良い。

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