捨て猫たちのトーチカ
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捨て猫たちのトーチカ

木田さっつ

人生のやり直し

ネタバレ
2023年10月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ スピンオフ元の時もそうですが、始まりは前作今作共に「犯罪者の再出発」です。
前作は攻めのモーゼこと猛瀬正臣が、今作は前回攻めだった隼人(今作では受け)。両者ともに前科持ちです。

日本は世界でも稀に見る非武力所持国で、犯罪率も世界に比べると低いし薬物汚染件数も少ない。
だからですかね。
罪を犯した人が法によって裁かれ、罪を刑罰により洗われても、社会が裁かれた人を安易には受け入れ難く、働き口も滅多にないからこそ部屋も借りれず、孤独となり再び犯罪を犯してしまう。支援施設というものもありますがまだまだ数が少なく。
気持ちはわかります。言い知れぬ不安や恐怖が有りすよね。中には本当に救いがない人だって居るのも承知してます。暴力、薬物…傷害有無にかかわらず犯罪は恐怖そのもの。
ですが、私には被害者であったのに脅され加害者になってしまった親戚が居るので、前作今作を見て思うところがあり、まず冒頭、書かせていただいたのですが…何を申し上げたいかと言うと「本当に罪を悔い、取り返しのつかない過去を一生背負いながらも正しく再起を図ろうとする人間に、ほんの少しでも良いから優しい社会になって欲しい」と思います。それを大前提として書きます。

人が転ぶ切っ掛けなんて些細な事と同じで、まともな思考が働かない中、踏ん張れるか踏ん張れないかは人それぞれでも、それに「環境が絡んだ避けきれない事態」が発生した場合、正しく実行する!と言い切る反面、本当に自分は果たして正しく在れるのか?とたまに思うのですが、隼人の場合は「成りたくて成りたくて仕方がなかった仕事」の中で「需要と供給の問題」や「本気になってしまったセ◯レ」が絡み最悪の形で自滅した流れですが…いやもう、本当に佐波さんはよく拾ってくれたな、と思います。立場的にも匿うのは非常にリスキーな中。最初は絶対裏がある!と思ったんですが…無意識に残ってた、あとからやってきた愛しさに、お互いが認め合って唯一無二となってく展開に胸が熱くなりました。
作中、前作よりも綺麗事じゃない、非常に現実的な出来事の数々に本当に彼らを応援したくなる。が、コレは隼人や佐波さんの主観が「見える」からで。社会が受け入れてくれる終わりで良かったと思う反面、冒頭の通り、現実でも、再起を願い居場所を求める者に少しでも優しい社会になればな…と思いました。

2人で罰を別けながら、お幸せに。
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