捨て猫たちのトーチカ
」のレビュー

捨て猫たちのトーチカ

木田さっつ

深いし重い…でも読後感はとても良いのです

ネタバレ
2023年10月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「オレを守ると誓ってよ」のスピンオフです。スピン元を読まずともストーリーは分かりますが、是非ともスピン元を読んでからこの作品を読んで欲しいです。テイストの違いの振り幅に驚きます。そしてあの言動の意味、罪の大きさ、闇の深さがよく理解でき、より心に沁みると思います。
スピン元で良いところが一つもなかった隼人と、心中読めないクセモノ感満載の佐波さんのスピンオフ。どうなるの???さっつ先生!?と一瞬でも心配したことを誠心誠意お詫びしたいと思います。
隼人の犯した罪は一生消える事はなく、一生その罪を背負って生きていかなければならない。しかし自分の罪を認め、被害者の苦しみを理解し、心から反省と謝罪の気持ちを持てたのならば、私は隼人も救済されて良いはずだと思いました。納得の行く形でラストを迎えられた事がすごく良かった。きっと手放しでハッピーエンドだと言えるラストではないです。罪が消えた訳ではないから。これからも罪と不安を背負い続けるから。でも一緒に罪を背負ってくれる人が、一番安らげる場所がいつも隣にいてくれるなら、これが隼人にとっての最善のハッピーエンドなのだろうと思います。そして佐波さんにとっても、価値観を根底から覆すほどの、「お前が死んだらオレも死ぬ」と言えるほどの大切な相手(隼人)に出会えたことが救済となっているのだと思います。
深かったし重たかった……。でも不思議と読後感はとても良いのです。読んで本当に良かった。
秋の夜長に心からオススメしたい、素敵な作品でした。
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