カンタレラ
」のレビュー

カンタレラ

氷栗優

一気読みするほど面白い!

ネタバレ
2013年12月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 先の方も書かれている通り、悪魔を宿している点と多少のフィクションを除いては、ほぼ現在に伝わる通りの悪名高く気高く美しいチェーザレ・ボルジアの半生記。
表題『カンタレラ』はボルジア家所有の有名な毒薬。イタリアが統一国家になる以前の領主達は毒薬を所有するのは珍しくもなく、特に有名なのがボルジア家とメディチ家。チェーザレは悪名高い反面、理想的な魅力的な人物(戦争時においての指揮官としては特に優秀でもある)とされている。この作品は多少登場人物が脚色されていたりするが、チェーザレ・ボルジアは大変興味深く描かれている。いつの時代も覇王を目指す者は戦争の為の遠征の繰り返しと政策の為の多くの布石、絶対的な仲間(腹心の部下)、ライバルや政敵を潰す手段に優れた者だけが生き残りその高みへと辿り着ける。マキャヴェッリが書いた『君主論』にもチェーザレは『灰色の瞳にオレンジがかった髪で容姿ことのほか美しく堂々とし、武器を取れば勇猛果敢』『広大な目的達成の為に自身の行動を制御しており、新たに君主になった者は見習うべき』『野蛮な残虐行為や圧政から救済するために神に遣わされた人物のように思えた』と理想的な君主としても挙げている。
チェーザレが産まれた時代や成長段階での彼の立場や周りの環境が彼を悪魔のような策略家に仕立てあげるのには充分すぎる時代背景だったように思える。この作品には歴史上の多くの有名な人物が登場するし、そういう点でも楽しめる。『ボルジア家はルネッサンスを生んだ』と今もって言われている事も私には魅力的。政治的背景だけでなく芸術的背景も見逃せない。歴史大好きの私には興味津々で長編12巻のラストに完結と印刷されていたからレビューしてますが、もしかしたら番外編があるのかも?ポイント追加して一気読みしました。チェーザレのいろいろな面が描かれていて面白い! 惣領先生の『チェーザレ』も読みたいけどまだ連載中のようなので、完結されたら読んでみるつもりです。これにはチェーザレの半生しか描かれてませんが、彼は没落の一途をたどり『広大なイタリア統一の夢』も果たせず31歳で戦死するのです。
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