業務上過失ポルノ[コミックス版]
」のレビュー

業務上過失ポルノ[コミックス版]

長与エリ子

いい意味でタイトルに騙されると

ネタバレ
2023年11月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ タイトルからエロ重視を期待して読むと若干肩透かしを食らうかも知れません。確かにえっちシーンがいっぱいあるんですが、「ヤってるだけ」のえっちじゃないと終盤になって解るような展開だと思いました。そのポイントでソコまで描かれてなかった(或いはわざと隠されていた)攻めのその時々の気持ちに思いを馳せながら反芻できるかどうかで感動の大きさが変わると思います。

受けくんは境遇が良かった為と本来の気性のおかげでわりと男前な性格をしています。重ねてややツンデレで最中はエロ全開。潔癖なところも腐女子ウケの良い理想的なキャラクターだと思います。
攻めさまは悪く言えば女々しい、客観的に見れば親孝行で優しい気質の人物だと思います。
さて腐の淑女の皆々様は、BLに於いて攻めは男前であって欲しいと思われる方が多いのではないかと推察しております。(要するに女々しい攻めはウケがよろしくないのでは?)
私もその一人なのですが、その価値観を外して読みますと、今作の攻めさまの人間的に弱い部分が刺さって共感してしまいました。
共感できてしまったので書き文字の少ないえっちなシーンが淡々と染み込み、すでに読み終えたシーンに対する気持ちが昂ってきました。
あと例えばですが、お口でするシーンで、ただソコだけを読むとエロさだけです。しかし今作はそのシーンまでの攻めさまの心情の積み上げをもう読者は解っているので、抑えていた気持ちのアレコレを思い、愛しさや悲しさややりきれなさや歓喜が同時に押し寄せて、その上でのエロさが目いっぱい享受できるのです。

今作は2020年にリリースされていて、性的マイノリティに対する世間の見方が激変するちょっと前かなと思います。
結局は政治が動いて法整備されてテレビや新聞で報道されないと(しかも何回も何回も!)世の中の理解度は変わらないです。昨今は差別する方が責められるところまで来ていると感じます。
なので現在(2023年)BLを読んでいてカムアウトするしないの理由がただゲイだから、というのでは納得できない自分がいます。
一昔前の、男同士だから世を忍んでも貫く純愛、を今描かれても何だかなぁと思ってしまいます。
今作はソコ以外で感動を描く、を見事にクリアした作品だと思いました。
いいねしたユーザ19人
レビューをシェアしよう!