毒を喰らわば皿まで
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毒を喰らわば皿まで

十河/斎賀時人

いつもより愛憎背徳倒錯多めな第4巻!

ネタバレ
2023年12月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 新刊もめっっっっっちゃ良かった…
この作品のどの結末にも最後のたった数ページでやられた~!!って感情になるのが最高に気持ちがいい!
竜の子のサブタイトルがアンドリムとヨルガの血統に重ねてるのは途中で気が付いてたけど、てっきりシグルドのことだとばかり…!穏やかで優しいジュリエッタが最後の最後で見せた凄惨なまでに美しい悪役令嬢としての顔に、これはアンドリムの娘~!血が強ぇ~!とひっくり返りました。これの何が最高って恐らくシグルドは妻が水面下でしていたことを一切知らないという点なんですよね…。やだそっくりこの父娘…。猛毒を孕んだ美しい大輪の花…。
今回は話の展開上濡れ場少なめ?な気がするけど、既刊の物語に比べ、5年の積み重ねを感じさせるというか情感ある濡れ場が多かった。戸惑うヨルガにものを教えるアンドリムが愉悦を多分に含んでたのが最高にアンドリム。それでもやっぱりいつもの彼ではないと感じる場面が本当に切なかった。アンドリムの気質もあってか悲壮感なんぞ欠片もなかったけど、記憶が戻ったヨルガに対するアンドリムの態度から、心の底では寂しかったんだなと…。10年前の記憶を辿るまで記憶のないヨルガに手を出させなかったところが…本当に…。健気というか純愛というか…。愛…。
ちょっとした展開も普段身長に合わない椅子に座って調べものしてるんだ、とかいつもの習慣でつい部屋を間違えるのはやっぱりヨルガ関連で気が弛んでるんだろうな、とかベッドサイドに精油を常備してあって、メイドが慣れた様子で準備しているということは、普段からヘッドマッサージしてあげてるんですか、とか5年分の普段の彼らを垣間見れたのが僥倖。ゼロに戻ったヨルガと一緒に読者もそれを追体験しているようで臨場感があって楽しかった。
アンドリムが無意識で墓参りに行ってしまうほどユリカノを愛していて、亡き後も心の深くに残っているっていうのが些か意外だった。けどそんなアンドリムの表面化した弱さ、脆さを目の当たりにして劣情を抱くヨルガは本当に成るべくしてアンドリムの番になったんだなって…。愛した女、亡き妻の墓の前でそれをやるのが最高に倒錯的。
1巻の最後にたどり着いた結末に、どのようにして彼らは至ったのか、を少しずつ紐解いていくこの物語の行く末をリアルタイムで追えるのが本当に幸せで楽しい。これからも楽しみな作品。
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