悪友【コミックシーモア限定版】
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悪友【コミックシーモア限定版】

村上キャンプ

余韻がすごい

ネタバレ
2024年1月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 心の深いところに届く作品でした。表紙の不穏さ、悪友というタイトル、夜の電話ボックス、それらが醸し出す暗い雰囲気と、大人びて冷めた鎧の中に子どもっぽさを持つ伊織の危ういバランスに、前半は特に緊張しながら拝読しました。普通の名前を持ち普通の家庭で育ち普通の青春が似合う吉見は、伊織にとってどれだけ眩しく温かな光だったろう。与えて貰える喜びは大きく、救いと希望全てのような存在だったのではないか。そんな吉見に素敵なものを託す伊織の姿は、切なく、小さな子どものような純粋さが痛々しい。吉見が救いになればなるほど、自分だけの吉見ではないこと、友達のはずなのに違う感情が芽生えていること、それらを静かに葛藤する伊織の寂しさが際立っていく。伊織は悪ぶりながらも優しい、環境が違えば「普通」の中にいるはずだった子です。だからこそ、5話から6話冒頭にかけてはかなり抉られました。一転して憑き物が落ちたような伊織の表情と、悲しい諦めの覚悟。そしてそこからの、このラスト、この表情。余計なものが何ひとつありません。読み返すとまた、表情や言葉の意味に気付き考え込んでしまいます。どこから読んでもです。とにかく余韻がすごい作品です。
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