瞞-ばん-【デジタル特装版】
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瞞-ばん-【デジタル特装版】

長船

地雷フリーの私が切り離して読めなかった。

ネタバレ
2024年2月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 絵が素晴らしく美しく、華やかで、まばたきを忘れるほど魅せられてしまった作品。単話の頃からずっとずっと気になっていて、単行本にまとまるのを心待ちにしていました。まさかのデビュー作だったとは……!!
作画が本当にお見事で、キャラクターの表情や仕草はもちろん、小物や背景、世界観を彩る花や木々まで美しかった……。特に最後の数ページは、一コマ一コマ、全てが隅々まで美しく、見惚れてため息が止まらず、なかなかページが捲れませんでした。

ストーリーは思った以上に辛かった……。私は地雷フリーの腐女子であると自負していて、BLはファンタジーとして、自分の価値観や常識からある程度切り離して読み、楽しめる質だと思っていましたが、この作品は少々辛過ぎて、複雑な余韻からしばらく抜け出すことが出来ませんでした。だって誰も幸せになっていないから……。
この歯痒さは、室町という時代背景にも起因するのでしょう。この時代の文化や価値観、生き辛さや理不尽さが根底にあるのだと分かっていても、やはり浜路には幸せになって欲しかったし、磐吉には悔いなき選択をして貰いたかったし、優しい奥さんや可愛い子供のことも裏切って欲しくなかったのです。
………思いっ切り現代の自分の価値観引きずってますね。全然切り離せていない……。でもファンタジーだからこそ、私は綺麗事を見たかったのかもしれないな、と思います。

「一目惚れってこういうことを言うのだ」と納得したくらい長船先生の描く絵に惚れたので、長船先生の作品は今後もずっと追いかけます。出来れば主人公達には救済を。そして描き下ろしや電子共通特典やシーモア限定特典のような、ほっこりできるストーリーを多く読みたいです。
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