パラスティック・ソウル unbearable sorrow
木原音瀬/カズアキ
このレビューはネタバレを含みます▼
心とは、記憶とは、命とは、愛とは、そういう哲学的な部分に切り込んだ話。
この最終巻を以て全ての時系列が整理され、伏線が回収された。主人公の正体に関して、仄めかすシーンが出てくると、スマホを握る手に汗をかいた。続編を渇望していた人物だとわかり、胃の奥が震える感覚。震撼させる程の興奮を文章で掻き立てる木原音瀬先生に脱帽。
先生の作品の登場人物は得てして情緒不安定なイメージではあるが、これほどまでに自分勝手で、救いようの無い主人公に終始イラついた。今作での主人公に対する共感は難しい。偏った考え方やモラルに支配され、失わなければ大切さにも気付けない。計画性があるようで非常に詰めが甘い。
また、今作で少し残念に感じたのは人間とビルア種の無能さ…。(全ては作品のラストの為仕方ないのはわかるが…)排出された『O』を全て踏み潰した→いや、ない。実験材料、もしくは科学、経済の発展のため確実に残す。その中で、罪人(とされる)ビルア種に子を産ませ、『O』の苗床として5歳になるのを待ち、寄生させる。そして排出の過程や条件を観察し続ける。もしくは強制的に研究,開発に従事させる。と、リョナグロの展開になるので却下か。いずれにしても『O』はどうとでも料理できる、天才的なアイディアだと思う。
ラストに関しては、『O』は精神体であり、記憶媒体ではない。『生きていて、心がある』というのを如実に表す形となった。ここからはネタバレ……フランからシドが抜け出た後、パトリックに対する愛はどうなるのか。どう転んでもハッピーエンドラストはまずないな。
とにかく『パラスティックソウル』という作品にこの生涯で出会えたことに感謝。
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