このレビューはネタバレを含みます▼
中野家にはしっかり者で優しい大学生の長男サトルと、ちょっと素行の悪い高校生の二男シューヘイの兄弟がいます。5つ違いの兄弟は、一緒に買い物に行ったり映画を観たりとっても仲が良いのですが、シューヘイは兄のサトルに誰にも言えない想いを抱いているのでした。室内を半裸でうろついたり、銭湯に誘ってくるサトルの無防備さにシューヘイはドギマギし、彼女の存在には動揺します。そして兄と顔を合わせるのが辛くて外泊を繰り返すシューヘイは、サトルに注意されて思わず「好きだから」と面と向かって言ってしまうのでした。シューヘイは仲の良い友達にゲイであることまでは言えても実の兄が好きとはどうしても言えません。泊めてくれるようになった兄の友人と身体の関係になっても、抱かれながら相手に兄を重ねてしまいます。ただの仲良し兄弟に戻りたいと思っても湧き上がる想いはどうしようも無く、「これ以上好きにならないからオレには関わらないでくれ」とはらはらと涙を流すシューヘイに胸を衝かれ、苦しむ弟に手を差し延べる兄の優しさが痛いほど伝わってきます。メリバとまでは言えませんが、誰にも言えない、誰からも祝福されない、相手の本心すら怖くて聞けないラストが心に刺さるお話でした。