櫻狩り
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櫻狩り

渡瀬悠宇

虐たい.性暴力.親子の葛藤と愛への渇望

2024年3月23日
大正浪漫書生BLに妖艶な桜で、怪奇幻想ホラーの香りがプンプンの好きな物オンパレードと思い込み、ドキドキ読み始め上巻の途中迄は、誰とでも関係を持つ心を閉ざした美麗な蒼磨と、純粋無垢な正崇のお互い密かに惹かれ合う純愛に胸がトキメイていたのですが、予想外に櫻子の出現より全てが一転して恐怖と戦慄に変わり、再度にわたる驚きの真実、目を背けたくなる様な折檻(今で言う虐たいやDV).少年への性暴力など現代でも続いている社会問題...... 華族制度に妾腹や不義の子、家の存続と嫡男、貧しい家の子供の身売りなどの時代背景に親子の葛藤、愛への渇望...胸が張り裂ける内容です。
ゲイではなくて、日本の男色の歴史からくる、稚児.小姓.蔭間の様に女性の代わりに欲望の捌け口とされる文化により、その当時外国人やハーフは珍しく、特にイギリス人(は其の辺の兄ちゃんでも綺麗)のハーフの蒼磨は少年の頃から誰にでも弄ばれ、心の傷の深さと孤独は計り知れません。
葛城の執着と独占欲による狂気、15歳の少女にしては異常な性的欲望と残虐陰湿で狡猾な櫻子。もう闇と破滅しか無く絶望的になるのですが、正崇は義弟と恩師のおかげで蒼磨を赦し、苦痛と憎しみ、受け入れられない想いから初めて愛と悦びに変わる時、やっとホッと息をつけこれで救われる様な余韻を残し、ラストのどんでん返しで全ての元凶と謎が解け、あまりにも美しく悲痛な最期....大正時代の旧字体を用いて文学作品の趣と素晴らしい表情の描写、大人の勝手で狂わされた子供の人生、愛と成長など内容の深さと重さ、心に突き刺さる衝撃的作品です!
番外編があるみたいなので、宜しくお願いします。
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