山小屋にて
」のレビュー

山小屋にて

菅辺吾郎

漫画として普通に面白いし、深い!

ネタバレ
2024年4月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ BLっぽくはないかもです。
恋だ性だという描写は無く、人間として敬愛する、人間としてお互いを必要とする、
そういう深くて暖かくて素敵なお話です。
チューが1回だけ、ふわっと。

登山を通して、主人公(山本さん)の本質が描かれています。
本人は自分を「クソ虫」と卑下していますが、
読んでいるほうとしては、山本さんが毒づくの「わかるー!」と共感するし、むしろ正直者だと思う。
会社での山本さんは自他共に認める「ポンコツ社員」、
山での山本さんは熊飼くん曰く「めちゃくちゃ頼れる人」。
でも山本さんの本質にギャップは無い。
山本さんは仕事にも山にも、真摯に向き合っている。
ただ会社ではスピードが求められていて、山ではスピードよりも慎重さが大事っていうだけ。

会社では熊飼くんが山本さんをフォローし(本人はそんなつもりが無くても)、山では山本さんが熊飼くんを助ける(本人が進んでやっているわけじゃなくても)。
山本さんが会社で使えない社員だとレッテルを貼られているために、自分に懐いてくる熊くんの対処に困りつつも、その居心地の良さについ甘んじてしまうのも分かる。
それはズルいことでも何でもなく、生きていくために本能が必要としているんだと思う。
熊くんだって同じ。命の危機を山本さんに助けてもらって特別な感情が生まれた。
そういう、相手に感じる安心感が、「これからもこの人と一緒に居たい」という気持ちになるのは自然なことだと思う。
激しい恋愛感情が無くても、共に生きる人って、こういう関係でありたい。
すごく羨ましい。

すごく素敵なカップルだと思います。カップルというか、パートナーと言うほうがしっくりくるかな。

登山の色んな知識も出て来て、読んでると本当に山本さんが頼もしい!
作者様が「登山解説書ではないので、漫画の情報だけで登山に行くのは危険です。自分でよく調べてから」と注意書きしていらっしゃいますが、
私は基本しんどいのが嫌いなので今後も登山は絶対しません。でも、やはり読んでて色んな知識が分かるのは楽しいです。

お話のテンポに画風もぴったり合っていて、読み返してみても もう一度細かくじっくり読んじゃいます。
最後の描き下ろしで独占欲がちょこっとだけ描かれて、わー、ちゃんとカップルだ!と微笑ましかったです!
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