背中を預けるには
」のレビュー

背中を預けるには

小綱実波/一夜人見

壮大で壮絶な愛の行き着く先に感動しかない

ネタバレ
2024年6月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 外伝まで全て読みました。あまりにも大作で感動が大きすぎて、読んですぐにはレビューどころか何も言葉にできませんでした。それ程に壮大で壮絶な愛の物語で、心を揺さぶられること間違いなしです。物語は、既にこの世にいないイオニアを中心に進みます。イオニアの最期に何が起こったのか、彼の心(愛)は誰にあったのか…イオニアに関係した人それぞれに後悔・苦しみを残し、魂は流転する。前世(イオニア)の記憶を持って生まれたレオリーノは、本人も周りもそうとは知らないまま、過去に関係する人々が運命に導かれるように集まり、イオニアの最期に何が起きたのか解き明かそうとします。
イオニアの魂がレオリーノに転生したと知れた時、かつてイオニアを取り合うように愛した男二人はどうするのか…過去の魂をそのままに愛する者・今の魂を過去ごと愛する者、それぞれの選択に胸を打たれました。
同じ魂を持っていても(持っていなくても)前世を覚えていても(覚えていなくても)レオリーノはレオリーノで、現世ではイオニアではないのです。レオリーノが選ぶ愛する人と、イオニアが愛した人は同じでも違います…限りなく近いけどやっぱり違う…ニアリーイコールの存在。
私は、当時イオニアは二人とも愛していたのではないか、どちらかを選ぶ前に最期を迎えたのではないかと思っています。「たられば」なんて人生にはありはしないけど、もしもイオニアが生き続けていたら、どちらかを選んだ・選べたのかな…読んですぐは、答えのない物思いに深く沈んでいきそうな重い気持ちになりました。
イオニアとレオリーノの菫色の瞳に絡めたセリフ「そして今度こそ、この空に還るのだ。星の瞬く夜と、暁の光が混ざりあう、この薄あかりの空へと」と「夜明け間近の薄紫の空に、一筋の朝日が差し込んだような色合い、夜と朝がすれ違う一瞬の空の色だ」にとても感動して、一度だけ冬の朝に見た、言葉通りの空の色にこのセリフが思い出されて、神々しいような不思議で綺麗な紫色に圧倒されました。それと「還る」という文字のチョイスが素晴らしいなと思います。何となく永遠を思わせる素敵な「かえる」だなと。
主役級のキャラだけでなく、脇キャラまで丁寧に心情なり状況なりを掘り下げてあって、それぞれにスピンオフを書いてほしいと思うくらい読み応えがありました。
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