おねがいヒーロー涙をみせて【電子限定描き下ろし付き】
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おねがいヒーロー涙をみせて【電子限定描き下ろし付き】

早寝電灯

心がほどけるということ。

ネタバレ
2024年7月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 早寝先生の作品は、心のひだを丁寧にとても慎重に描いて物語に織り込んでくださっていて、小さな波が少しずつ砂浜を濡らして深くしみこむように読み手の心にもじんわりと潤してくださるようです。

本作品も例にもれず優しい波が少しずつしみこみました。
主人公のユキの変化が嬉しくてほっとする読了感。

ユキは小さなころから一人自分を律していたのかもしれない。
小さな心は寂しさも孤独もちゃんと抱えていたはずだけど、とても優しくて不安だから余計に人には頼らないようにして生きてきたんだろうと、その心を思うと切なくて涙が出てしまう。
好きな人という存在を本当の意味で認識してしまえばすぐさま崩れてしまう自分が恐ろしくて自分を奮い立たせていたんだろう。

誰でもが言葉になるかならないか、言葉にするほどもないような胸の痛みまでを表現するのが本当にお上手です。
崩れる自分を守るために気づかないふりをしたり、暗黙の了解の上に立っている距離感を死守したり。
大丈夫だよ、安心していいんだよと丸ごと抱えてくれる人の存在がどれだけ幸せなことなのか、シノとユキの表情で伝わってきました。

ユキの過去については、苦虫を嚙み潰したような感情が残ります。
許せない、本当に。
性別は関係ないです。
勝手な酷い行動にはらわたが煮えくり返る思いです。
そんな問題定義も先生はしてくださいます。

この作品、完結となっていて...
もうちょっとこの幸せな二人の物語を読んでみたいところです。

**215ページ**
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