塩坊主に惚れたキツネ
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塩坊主に惚れたキツネ

伽奈茶井子

この胸のヒリつきは、まさにBLのそれ

ネタバレ
2024年9月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ レビューのタイトルに並ぶ「塩坊主」「BL」「不覚にも泣いた」の文字が気になり、試し読みしたら「その塩坊主『俺は男色だから』と言っておるではないか!!!」とBLセンサーが刺激され、勝手に指が30%オフのゲキアツクーポンを利用してポチってました。

最初はひたすら抱いてと迫るキツネと塩過ぎる塩坊主の攻防に微笑み、小坊主、タヌキ、カワウソ師匠などの個性豊かで憎めないキャラにニコニコしていたのに、次第にキツネが塩坊主に惚れた瞬間とその心境が描かれ、心躍らせる姿に胸キュン。なのに、キツネと人間の間に隔たる、人外と人間の関係のままならさ。もう、感情移入の対象がいつの間にかキツネになって、その苦しさに共感してしまい、その都度、胸がキュッとし、涙腺が刺激され、いつの間にかティッシュの山…「そんな、キツネと坊主で、ウソでしょ?」と思って読み返しても、その都度涙腺が刺激される、まさかの切なキュン物語だったのです✨

と言っても、そんなヒリつきばかりでなく、テンポの良い小坊主やタヌキたちのツッコミ、どこまでも塩で、ナマズのように捉えどころがないのに、色気と力強さと知力に溢れる塩坊主が魅力的。ちょっとくらい、キツネに心揺らいでもええんやで~、とその心理描写を読み込もうとしても、ホンッとに粗塩。でも、ずーっと態度がしょっぱいせいか、時折塩坊主から現れるまともなセリフが、逆にすごく効果的に優しく思えてくる不思議。この沼のような和尚に、純粋なキツネが思い詰めて病んだり、キレたりする姿にキュンキュンが止まらない。しかも、この和尚、セリフのセンスがいいんです。メタな台詞を発しては、小坊主に突っ込まれる構図もホント好き!

そんな風に笑いの要素もたっぷりありながら、人間になれないキツネの純愛と、それがどうやっても叶わないと諦めそうになる瞬間に訪れるどうしようもない切なさ。この切なさは、恋愛に対する障害の高さゆえに惹かれるBLに通じるものがある。笑いと切なさがないまぜになった複雑な感情を、キツネと和尚が主役の本作で感じるなんて、作者様のセンスの良さをヒシヒシと感じます。

もともと、支部に掲載していたところ、声がかかって単行本となったそうで続きが支部に。相変わらず和尚が塩ww夫婦になるまでにキツネの寿命が尽きないかハラハラ…
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