向日性のとびら
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向日性のとびら

SHOOWA

BL展開を添え物にするストーリー力

2024年9月17日
欧州の古都で暮らす男が突然亡くなった兄の養子と同居することになる。何故だが自分を慕ってくる少年に翻弄されながら、怪しげなことに巻き込まれていくお話。
不思議な展開から始まるストーリーが、ミステリー要素を含みながら膨らんでいきます。その内容がCIAの工作員だったり、記憶の研究に関する実験だったりと、ちょっと話が小難しく複雑なので、何回か読まないと理解するのが大変です。でも、理解したいと夢中になる程面白く、惹きつけられるストーリーで、物語を創る力が素晴らしいと思いました。
結局シスが受けた手術(実験)がどのようなものだったのか等、記憶の研究の部分にははっきりと分からないこともありましたが、記憶がなくてもシスはカイを自然と受け入れるし、全てを覚えているからこそカイはシスの言動に懐かしさを覚え嬉しそうにする。その様子にお互いの特別な情を感じました。火事の中助けに来てくれた時も、再会後初めて会う時も、扉を開いた先にはシスがいて、新しい人生があった。カイにとってシスは太陽だったのかなと思います。
そして、シスには電波な人だと言われていた兄メルナールも、実はとても優しい人だと思いました。子供が実験体になることを嫌がり、シスへの手術を施したことで精神的にまいってしまう姿は、研究バカというより普通の優しい人。兄として、親として、二人の幸せを願うメッセージには、メルナールの愛が詰まっていて感動しました。映画のようにドラマチックだけど、とても静かな愛が横たわっている、そんな素敵な作品です。
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