ぼっち死の館
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ぼっち死の館

齋藤なずな

市井に生きる人々の物語

2024年9月17日
某サイトの書籍レビューを見たとき、一瞬、息が止まりました。
齋藤なずな先生!?懐かしぃぃ!!!

30年以上昔の話。
雑誌に掲載されていた先生の短編が、ものすごく好きでした。
その名前を聞くだけで当時の自分を思い出すほど、自分にとって特別な作家様。それが30年以上の月日がたった今、また先生の作品を読めるなんて思ってもいなかった。

絵のタッチはかなり変わってるけど、この構図、この視点、この哀愁……まさに齋藤なずな先生の世界。
「牛の行く」を読みながら、高い文学性がこの作家さんの魅力なのかなと思った。

体は衰え、蓄えも心細く、ただ一人――。
それでも人生、悪くないよと。
作品の向こうで先生がカラカラと笑っているような気がした。

濃厚な死の影とリアルな孤独が読んでいて少し辛かったけど、すべてを受け入れ、包み込むような優しさがじんわり胸に染みる。
ただ優しいのではなく、どこか諦めにも似た、ひんやりとした複雑なテイストがすごく好き。

齋藤なずな先生、また先生の作品に会えて嬉しいです。
これからも先生の描く世界を楽しみにしています。
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