寓話性が高い





2024年9月26日
主人公のあまりの転落にショックを受けます。悲しみ、憎しみ、恐怖、孤独、そして慈愛。ヒロインの感情の機微に読者として動揺しながらも最後まで目が離せません。いろんな『ありえない』が詰まっているのですが、伝えたいテーマを演出するためのエピソードとして読めるので気になりません。リアルを求める話ではなく奥底にある人間の業の深さを浮き彫りにしていくために様々なストーリーが紡ぎ出されていきます。いろんな人との出会いによって人間が影響しあって変わっていく過程が非常に丁寧に丹念に周到に描かれています。純文学を読んだ後のような心をざわつかせる混乱と、美しい神話を読んだ後のような静かな普遍的な感動が同時に味わえる何とも不思議な話でした。絵に癖がありますが、それなりの読書経験や映画やアートが好きな人ならそれほど気にならないかと思います。それほど知られた作品ではないでしょうが、一度読んだら忘れられない物語です。

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