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今月(5月1日~5月31日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • 能美先輩の弁明

    大麦こあら

    類稀な構成力とバランス感覚
    ネタバレ
    2026年1月21日
    このレビューはネタバレを含みます▼ BL作品としての『萌』はもちろんのこと、構成力の妙に舌を巻いています。キャラクターの造形も良くできていて、能見先輩と瑛人くん2人のそれぞれの好きな哲学者、思想、ファッション、インテリアなど細かいところの作り込みがすごい。BL的なエンタメ性はきちんと押さえてるのに、どこか本質的な、人と人との関係性における永遠や普遍性を追い求める切実さが感じられて、考えさせられる部分もあります。哲学を愛しながらも不毛なるものとして悟り寛容で一種退廃的な能見先輩。哲学と真摯に向き合い学問として愛してやまない瑛人くん。そんな2人の情愛は異質を受け入れる慈愛、同質を追い求める偏愛、といった形に見事なコントラストを成しています。本作は性描写も相当にありますので読む人を選ぶところもあると思いますが、それこそデカルトの唯心二元論的な部分を想起させられるところもあります。絵柄が淡白で独特の柔らかさがあるので身体を繋げることがキスの延長のようでいい意味でエロくないです。とにかく能見くんと瑛人くんというイマドキで美しい男子をカジュアルにも哲学的にも堪能できる一粒で2度美味しい話です。正反対なようでどこか似ている2人の思想が溶け合いながら溶けきれずに残る、それがそれぞれの『らしさ』であり『魂』なのかも。それを互いが愛してやまない感じが非常に伝わります。また、瑛人くん目線で読むと能見くんが困っちゃうぐらい魅惑的。この世のありとあらゆる俗っぽさを味わい楽しみ切っては捨てて身軽に生きる能見先輩のモットーは『善く生きる』こと。あまりに有名なソクラテスの言葉ですが、本当に鼻につかずすごい説得力で能見くんのキャラと馴染んでいるんですよね。自分の欲に忠実で性的にも奔放なのに、同時に清廉さ、誠実さ、知へのサンクチュアリを持ってる人物。瑛人との行為でどれだけ乱れても、ふと気づくと自分の世界に没頭し思索している姿とか、とにかく魅力的です。例えば旅館で散々イチャイチャした翌日も朝日の射しこむ窓際で哲学書を読み耽ってる…そりゃもう瑛人も惚れ惚れして拝みたくなるでしょう笑。アンビバレントな気持ちにさせる不思議に魅力的なキャラです。続編も出ているようなので楽しみに読んでいきたいです。また作者の他の作品も期待しています。BL作品も秀逸ですが、絵も表現力も構成力も高いのでいろんなジャンルを描いてくれたら嬉しいです。とにかく素晴らしい。
  • 愚者の皮

    草野誼

    寓話性が高い
    2024年9月26日
    主人公のあまりの転落にショックを受けます。悲しみ、憎しみ、恐怖、孤独、そして慈愛。ヒロインの感情の機微に読者として動揺しながらも最後まで目が離せません。いろんな『ありえない』が詰まっているのですが、伝えたいテーマを演出するためのエピソードとして読めるので気になりません。リアルを求める話ではなく奥底にある人間の業の深さを浮き彫りにしていくために様々なストーリーが紡ぎ出されていきます。いろんな人との出会いによって人間が影響しあって変わっていく過程が非常に丁寧に丹念に周到に描かれています。純文学を読んだ後のような心をざわつかせる混乱と、美しい神話を読んだ後のような静かな普遍的な感動が同時に味わえる何とも不思議な話でした。絵に癖がありますが、それなりの読書経験や映画やアートが好きな人ならそれほど気にならないかと思います。それほど知られた作品ではないでしょうが、一度読んだら忘れられない物語です。
  • 凪のお暇

    コナリミサト

    生き辛さを笑い飛ばす
    ネタバレ
    2024年9月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 人生の中でこんな風に『お暇』をとる時間は誰しも必要なんじゃないかかと思います。老若男女問わず誰もがみんな立ち止まらないイワシの群れの住人なのかもしれない。主人公の凪を取り巻く人々のある意味群像劇。みんな完璧じゃなくて、でもユーモラスでチャーミング。幸せの定義ってなんだろうと改めて考えさせられます。どの人も間違ってるところがあるし正しさとある、決めつけない描き方が絶妙で作者の力量が窺い知れます。主人公の凪の自他ともに向けられる分析力が切れ味よくて面白い。人間観察が得意な作家さんなんだろうけど、根底に人間に対する確固たる愛を感じます。凪をキレイに描きすぎてないところが読みやすいです。慎二とゴンをめぐる恋愛関係もどう決着をつけるのか気になるところではありますが、3人ともダメダメなところと魅力的なところを均等に描いていて読んでてモヤモヤしたストレスがなく楽しいです。両天秤で比較してる感じのいやらしさを感じないからでしょうか?この話は恋愛が主軸ではないと思うし、むしろ登場する全てのキャラクター全員の『お暇』がどういった形で終わるのか、その時何が始まるのか、それを楽しみにこれからも読んでいきたいと思います。