このレビューはネタバレを含みます▼
イレギュラーな人間同士の愛と見せかけて、にいちゃんは贖罪として、ゆいは初めて居場所をくれた人への依存として相手を選んでいるようにも思えるエンド。
作中で繰り返し表現される「普通の人が向ける"気持ち悪い"の感情」は、同性愛への差別偏見というより「トラウマを負った被害者への無理解」のようにも読めた。
ゆいも最後は円満に結ばれたように見えるけど、舞子と付き合っている時の自己嫌悪を見るとにいちゃんから自尊心をゴリゴリに削られているし、同世代とするような対等なコミュニケーションを作る機会はかなり失われてることが伝わってくる。
ゆいとにいちゃんは被害者と加害者でありながら、同時にそういう「理解されない苦しみ」を共に背負う存在でもあるわけで。
その重荷が一般社会で受け入れられない以上、トラウマを負うもの同士身を寄せ合って生きるしかない。
もちろんその上で、傷を負った(社会的には祝福されない)相手と生きていく選択は一つの覚悟なんだと思うんだけど、書き下ろしラストの薬やタバコはその「世間に苦しみを理解されず自分達だけで抱え続けなければならない重圧」のように感じた。
幼少期の出来事によって「普通」の世界に帰る場所をなくしてしまった人達。
どこまでが愛で、どこまでが執着や依存なのか、読者も2人も真には分からないんじゃないかと思う