はだしの天使
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はだしの天使

野ノ宮いと

地を歩く人へ

ネタバレ
2024年10月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 胸が温まる優しい物語で、何度も読み返させていただいている作品です。冬の寒い時期のストーリーですが、だからこそ隣り合う体温の温もりが愛おしい、というのが絵柄から伝わってくるのが素晴らしい。内容も、様々なキャラクターが持つ様々な愛の形がテーマで、それらは時に苛烈に見えたり、愛に見えなかったりもするのですが、最終的には彼らなりの愛し方で落ち着いてエピローグを迎えるところが、読後感を柔らかくしてくれています。
このお話が大好きな理由なんですが、主役のお二方、ターナーさんとベンジャミンさん以外に登場する方々も、自分の意思と目的があって物語に関わってくるところです。恋愛絡みではない関わり方をしてくるあたりが、他のBL漫画とは少し違う点なのではないか、と思いました。群像劇じみていて、読んでいて映画を見ているような気分になります。劇中の言葉も、無駄を省かれた量で語られるは多くなく、相手と伝え合うコミュニケーションより、表情や回想で綴られる思いが多い部分もあります。これを絵だけで伝えきる表現力や画力には感服の限りです。個人的にフィクションのジャンルでは、ファンタジーやSFに多く触れてきたので、この作品のような作風が合っているのかもしれません。
はだしの天使、なんて素朴で可愛らしい作品タイトルも素敵です。幼い印象と、寒々しい連想をさせるタイトル。人に興味を持つ、というのは、人間の第一歩だと思っています。人との間に感情や関係性をもたせることを、人間と呼ぶのだと。無垢で幼気だったはだしの天使は、その足で歩き人を知って世界を知って、きっと裸足の形も変わっていく。ミカエルさんが最後、そうか、と一言だけ言う場面に、読者である自分の心情も重なりました。
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