蛍火艶夜 単話版
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蛍火艶夜 単話版

amase

人生観を変えた作品

ネタバレ
2024年10月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 偶然目にした広告が気になり、試し読みで心を射抜かれ、全編読了してからも未だ余韻を引きずっている作品です。私の中でBLの枠を超え、とにかくキャラと物語に魅了されました。
どの章も素晴らしいのですが、私の一推しは橋内和中尉編です。作中でも特に温かいお話だと思います。和さんの予科練時代の回想以外、痛々しい暴力シーンも皆無のはず。
タロちゃんは思いやりがあり、普段の表情からは想像つかないほど細やかな気遣いができる子。和さんは士官ながら目下の者に優しく、柔和で端正なお顔にその人柄が表れているかのよう。そんな情に厚い二人だからこそ、今生の別れの場面は涙なしでは読めませんでした。
出撃直前、タロちゃんに口づけて想いを告げた和さんの、照れたような恥じらうような表情が堪らなく愛おしく…!そしてラストのモノローグ、直接的な最期の描写はありませんが、逆にその凪いだ海のような静かさが切なくて…。大好きなお話なのに、読み返すたび泣いてしまいます。散り征く間際の和さんの記憶がタロちゃんだったのが何よりの救い。もう二度と無い地上での敬礼姿、全て吹っ切ったような凜とした表情が目に焼き付いています。
私の大伯父も戦時中は飛行機乗りで、陸軍飛行戦隊に所属、四式重爆・飛龍の正操縦者でした。数名編成の部隊の隊長を務め、陸海は違えど、鳴子ヒソーチョと同様の立場だったようです。
搭乗機が一式陸攻とよく似ていたことも相まって、鳴子部隊編はかなり感情を揺さぶられました。手元にある飛行服姿の当時の写真、戦友たちと写る一枚は、やはり双方を重ねてしまい…。キャラたちが実在したら同世代、そう思うと胸がいっぱいになります。
今まで戦争物は辛くなるからと避けがちでしたが、辛さ以上に得るものが多い作品でした。読了後、凄絶な時代を翔け抜けた彼らのことをもっともっと知りたくなり、ゆかりの地を訪れ当時を偲び、学び直しています。
自分でも驚くほどに人生観が変わりました。こんなにも強く鮮やかに「命」を感じる物語、出逢えたことを心から嬉しく思います!
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