春の呪い
」のレビュー

春の呪い

小西明日翔

作者買いです

2024年10月26日
溺愛していた妹が19歳という若さで亡くなり、姉がその婚約者と付き合うことになるも罪悪感から別れます。その後、妹のSNSを偶然発見して闘病中の本音を知ることになります。ここで大抵は、妹の姉の幸せを願う気持ちが綴られていたりして、姉の気持ちが少し救われるような展開が多いと思うのですが、この妹は違うんですね~。どちらかというと、姉というより母親に甘えるような感じなのかな。姉なら喜んで自分の犠牲になってくれると信じて疑わない。そういう態度をこの姉はずっと妹に対してとってきたから仕方ないですね。この姉妹は少し極端ですが、私も妹がいるので何となく気持ちがわかります。
姉の夏美は普段は明るく振る舞っているけれど、「自分は親から愛されなかった」という認識が心に大きな穴をあけていて、それを妹の春を守るということで埋めようとしているようでした。春に自分の存在意義を見出して、自分にはそれしか価値が無いと思い込んで、それがエスカレートしていった感じ。
完全に春に依存していた状態で急に依存対象を失ったというところから始まって、そんな夏美が自分で自分に価値を見出せるようになるためにスタートを切るところで物語は終わっていました。漫画の世界の特殊なケースとして読んでしまえばそれまでですが、主人公の夏美が心に開く大きな穴を埋めようともがく姿は、多くの人の共感を得るのではないかと思いました。
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